かなり前に、三遊亭円丈師匠の『落語家の通信簿』を読み、記事を書きました。
そういえば、三遊亭円丈師匠と言えば、新作落語のパイオニアであると同時に、かの有名なベストセラー「御乱心―落語協会分裂と、円生とその弟子たち」を執筆されたことで知られています。
昭和の名人のひとり、三遊亭円生が、落語協会の真打ちの粗製乱造に反対し、一門を率いて独立してから亡くなるまでを、弟子の視点から実名で赤裸々に語った、暴露本に近い話題作です。
長らく読みたいとは思っていたのですが、絶版になっているので、結局読まずにいました。
ところがこのたびまさかの文庫化
- 作者: 三遊亭円丈
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2018/03/06
- メディア: 文庫
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表紙、円生師匠に似てるな。
文庫化されたはいいものの、今更買うのもなーと思っていたら、一之輔師匠がこんなツイートをしていたので結局買ってしまいました。僕前座じゃないけど。
「御乱心」読んでない前座とかいるのな。読むだろ、普通。
— 春風亭 一之輔 (@ichinosuke111) 2018年4月21日
早速読んでみた。これは面白い。
ちょっとでも落語に詳しい人なら、めちゃめちゃ興味深く読むでしょう。
気になるところは、なんか文体が古臭い。登場人物のセリフが「仕方がないヨ!」みたいな感じで、なぜか語尾の「ヨ」が全部カタカナです。しかもほぼビックリマーク付き。30年近く前にでた本なので、仕方がないのか。
全編通して面白かったのですが、特に心に残ったのは、独立後の円生師匠の振る舞いの切なさ。
詳しい内容は本編に譲りますが、独立したあとの円生師匠のすべての行動が、独立したことが正しかったと自分や周りの弟子たちに言い聞かせるような言動ばかりで、そこに円生という人間の頑固さと弱さが現れていて、ちょっと読んでいて胸にズキンとくるものがあります。この独立後の気苦労と焦りが死期を早めたことを考えると、やはり切ないですね。
あと、先代の円楽師がちょっと悪く書かれすぎている気もします。ここはあくまでも弟弟子の円丈師匠の側からみた風景だったということで、少し割り引いて読む必要があるかなと思います。「落語家の通信簿」でもそうでしたが、断片的な情報で自分の考えを事実のように書いちゃう傾向が円丈師匠には少しある気がするので…。
内容の主な部分ではありませんが、この本を読む限り、さん生(現:川柳川柳師匠)は本当に師匠から愛を受けず、不遇だったんだなというのが改めてわかります。それで弟子のつくしさんに一番はじめに教えた噺が、円生の速記本を片手に三遊亭伝統の「八九升」というのだからこれもちょっと涙が出てきます。川柳師匠には長生きしてほしいなと思いました。