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すあま先生が興味があることを勝手に書き散らしてしていくブログ

『落語家の通信簿』(三遊亭円丈:著)はちょっと残念だった

あちこちの落語会でネタにされているため、ついつい買ってしまいました。
こないだの会での柳家三三師匠いわく、2万部売れているそうです。


三遊亭円丈師匠が、現役を中心に落語家を評価するという本です。
買う人は誰がとりあげられているかを知りたいはずなのに、どこにも目次がないので、
引用してみます。

  


前口上……落語家が、落語家を採点する
第一章 円丈が教える! 落語の楽しみかた
第二章 やはり聴くべき! 伝説の名人四人
 桂文楽三遊亭圓生柳家小さん林家正蔵
第三章 個性も芸のうち! 二十一世紀の大御所五人
 橘家圓蔵柳家小三治三遊亭圓窓三遊亭円丈春風亭小朝
第四章 芸の力はどう? 「笑点」メンバー五人
 桂歌丸林家木久扇三遊亭小遊三春風亭昇太林家たい平
第五章 甘口辛口! 中堅四天王
 昔昔亭桃太郎柳家さん喬瀧川鯉昇・三遊亭歌之介
第六章 伸びるか消えるか、正念場! 若手五人
 橘家文左衛門古今亭菊之丞柳家三三桃月庵白酒春風亭一之輔
第七章 そして家元がいなくなった! 落語立川流五人
 立川談志立川談春立川志の輔立川志らく立川談笑
第八章 落語界を救う! 新作派六人
 林家しん平三遊亭白鳥柳家喬太郎林家彦いち春風亭百栄柳家小ゑん
第九章 名跡を継ぐ! 落語家2ファミリー+1
 古今亭志ん生金原亭馬生古今亭志ん朝 林家三平林家三平林家正蔵 三遊亭圓楽三遊亭圓楽
第十章 笑わせてなんぼ! 上方落語六人
 桂枝雀桂米朝笑福亭松鶴月亭可朝桂文枝桂文珍
第十一章 すぐ聴け! 八十代・大長老五人
 桂米丸・三笑亭笑三・三遊亭圓歌三遊亭金馬川柳川柳
付録 読んだら行こう! 寄席ガイド



円丈師匠の落語はぼくも嫌いでありませんし、高く評価する評者が多いのはわかります。
けれども、批評本として本書を純粋に見てみると、かなりお粗末な内容ではないかと思います。

落語家を批評・評価した本はいくつかありますが、
それらと比べてこの本が劣っていると感じるのは2つです。

1.各噺家の分量にばらつきがある。
今まで円丈師匠と落語会をやったことがあったり、交流のある落語家のページはわかりやすく多いです。そして、協会がちがったりしていて円丈師匠と交流の無い落語家のページは、わかりやすく少ないです。
5ページたっぷり割いている落語家もいれば、2ページ弱で終わっている落語家もいます。
おすすめ演目が3つ書いてある落語家もいれば、書いていない落語家もいます。
落語家に通信簿をつける、というコンセプトならば、同じ分量、形式の上で平等に評価して欲しいところです。

2.関わりのなかった噺家を生で聞いていない。
一緒に落語会をやっていなかったり、協会がちがってあまり会えない落語家の落語をどうやって評価しているかというと、
YouTube、DVD、CDがメイン。それプラス噺家仲間の評判。
第一章で「落語はライブに限る」と言っておいて評価がYouTubeというのは、ちょっと不誠実でしょう。

そんな感じで、この本で言う評価は「俺様が好きな落語家・嫌いな落語家」という
レベルのものでしかないように思います。
落語家に詳しい人や円丈師匠のファンが、それを知った上で読むには、相当おもしろい本と思いますが、
単純にどの落語家が今面白いのかを知りたい人は、別の著者の本を読んだほうがいいと思います。
一番オススメできるのは、広瀬和生氏の「この落語家を聴け!」でしょうか。
完全に平等とはいえないかもしれませんが、年間三〇〇席近くの落語を生で聴いている人の
本なので、説得力があります。


あ、そうだ。全然関係ありませんが、
学生時代に通った神保町の「まんてん」というカレー屋さんのマスター、
ご尊顔が円丈師匠に激似でいらっしゃいます。